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さて、色々遣わせてみたものの、中々上手くいかないアマテラスオオミカミは改めて相談しました。
「今度は誰を遣わせるのが良いでしょうか？」
するとオモイカネノカミと八百万の神様達は、
「天の安の河の河上の岩戸に、アメノオハバリ(天尾羽張)が住んでいます。
彼か、彼の息子のタケミカヅチ(建御雷之男神)を遣わせましょう。」
と言いました。
しかしアメノオハバリは河を塞き止めて居座っているので、他の神様は先へ進めません。
そこでアメノアクという神様を遣わせて、アメノオハバリに相談しました。
アメノオハバリは、
「恐れ多いことです。アマテラスオオミカミに協力しましょう。
ただ、こういった事態であれば私よりも息子のタケミカヅチを遣わせる方が良いでしょう。」
と言ったので、アマテラスオオミカミはアメノトリフネ(天の鳥船)と一緒にタケミカヅチを下界へ遣わしました。
出雲の国の伊耶佐に降り立った二柱の神様達は、そこでオオクニヌシノミコトに向かってこう言いました。
「アマテラスオオミカミとタカギノカミの命令で遣わされてきました。
アマテラスオオミカミは、『あなたが治めているこの国は、私の子が支配するべきだと命じたものです。あなたはどのようにお考えですか？』
とおっしゃっています。」
「私には答えることができません。私の息子、コトシロヌシノカミ(言代主神)が代わってお答えいたしましょう。
ただ、彼は鳥を狩ったり魚を取りに行ったりしていて、まだ帰ってきていません。」
と言ったので、アメノトリフネがコトシロヌシノカミを連れて来て問いただしました。
彼は父のオオクニヌシノミコトに、
「恐れ多いことです。この国は天の神様のお子様に献上致しましょう。」
と言い、逆手で手を打っておまじないを済ますと身を隠してしまいました。
そこでタケミカヅチは改めてオオクニヌシノミコトにこう尋ねました。
「あなたの息子はああ言っていましたが、まだ他に言いたいことがある子はいますか？」
「私の子にもう一人、タケミナカタノカミ(建御名方)がいまます。
この子以外にはもうおりません。」
と答えました。
するとタケミナカタノカミが大きな岩を手の上で転がしながらやってきて、大きな声で言いました。
「誰だ、俺の国にやってきてひそひそと話している奴は。
そうだ、俺と力比べをしよう。まずはお前とからだ。」
といってタケミカヅチの手を掴むと、その手はあっという間に凍ってしまい、それは剣の刃にも見え、驚いたタケミナカタノカミは後ずさりをしてしまいました。
「今度は私があなたの手を掴みましょう。」
と言ってタケミカヅチが手を掴むと、タケミカヅチのあまりにも強い力の前に、タケミナカタの手はまるで柔らかい葦に感じられ、そのまま投げ飛ばしてしまいました。
タケミナカタノカミはそのまま逃げだそうとしましたがタケミカヅチは後を追いかけ信濃の国の諏訪湖まで追い詰めると、
「恐れ多いことです、どうぞ私を殺さないでください。
私はもうこの地以外にはどこにも行きませんし、父と兄の言うことにも逆らいません。
この葦原の中つ国は天の神様のお子様に献上致します。」
と泣いて謝ったのでした。
オオクニヌシノミコトの元へ戻ったタケミカヅチは、こう言いました。
「あなたの息子たち、コトシロヌシノカミとタケミナカタノカミはアマテラスオオミカミの命令に逆らわないと答えましたが、あなたはどうですか？」
「私の子供たちが答えた様に、私も同じ気持ちです。
この葦原の中つ国はご命令通り、全て差し上げます。
ただ、私の住む場所をアマテラスオオミカミのお子様が天の神の後継ぎとなって住まう御殿の様に、地中深くに基礎を作り高天原に届くほど千木を上げて造って下されば、その暗いところに隠れましょう。
また、私の百八十もいる子供たちは、皆コトシロヌシノカミを先頭にお仕えしますから、逆らうものもいないでしょう。」
とオオクニヌシノミコトが言うので、タケミカヅチは出雲の国に出雲大社を造り、料理人まで用意しました。
そうしてオオクニヌシノミコトも出雲大社に身を隠し、かくしてタケミカヅチはアマテラスオオミカミの元へ戻って葦原の中つ国を平定した旨を報告したのでした。